日本の文化と風土に合った日本型CCRC開発のアイデアが生まれたのは、1992年、エリクソンシニアリビングCEOのジョン・エリクソン氏と出会ったことから始まります。その時、エリクソン氏からCCRCの経営・管理について教えてもらう幸運を得ます。その後、2005年、2007年に再度訪米し、CCRCの詳細な仕組みをジョンから学びました。
それから、20年余りが経ち、日本型CCRC開発の3つの課題を解決し、これからその構築に取り組んでいこうとしています。
そのような折、共同研究者の九州大学医学部の馬場園教授が、大学からの依頼で医学部ライブラリを執筆することになりました。そのテーマを検討した結果、米国のCCRCを紹介し、日本型CCRCをテーマとして書くことになりました。私は日本型CCRCをつくり上げていく上で米国のCCRCから学ぶこと、およびこれまで4つの医療法人と研究してきたケーススタディの内容について、「医療福祉経営マーケティング研究会誌」に発表した内容をまとめ直すことを担当しました。
そこで、問題となったのが、「日本型CCRC」という言葉でした。なかなかわかりにくいということ、和名の方がわかりやすいということもあり、これまで、日本版CCRC、日本型CCRCと呼んできたものを、「高齢者健康コミュニティ」と変更することにしました。
ちなみに、その本の中で、「高齢者健康コミュニティ」が役割を果たす要素は主に次の4つです。
1.自立型、支援型、介護型の3種類の住まいともつこと
2.3種類の住まいに応じて継続したケアと提供すること
3.経営の自立性、透明性、そして安定性が高いこと
4.入居一時金が50〜100%返還されること
特に日本では、支援型の住まいという概念がなく、自立型住まいがほとんど整備されていません。
執筆中の著書の中で、米国ノースカロライナ州のCCRCと福岡県の自立型住まいというべき有料老人ホームを比較しています。その結果、福岡県の自立型住まいをもつ有料老人ホームは富裕層を対象としたもので、米国のCCRCは多くの中間層が入居、生活できるという点で商品の価値が根本から異なるわけです。
これから、日本型CCRC~「高齢者健康コミュニティ」を構築していくために、P.ドラッカーのいう「われわれの計画は何か?」を問いかけ、その実現に向けて具体的に取り組んでいくつもりです。
なお、冒頭で話したジョン・エリクソンとは、この5月13日、中国、上海で、中国型CCRCのグランドオープンセレモニーに招待され、そこで再会し、「高齢者健康コミュニティ」の成功に向けたアイデアとアドバイスを頂きました。ジョンと上海で再会した内容、中国型CCRCは、本ブログの別の稿でお話しできればと思います。
今回は日本型CCRCを、「高齢者健康コミュニティ」と和名に命名したことをお知らせします。これから、その実現のために一歩一歩確実に進んでいきたいと思います。
その際に、稲盛和夫氏が、1982年の京セラの経営方針発表会の席上で発表したスローガン、
「新しい計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり。さらば、ひたむきにただ想え、気高く、強く一筋に」
これは、積極的思考を説いた哲人、中村天風氏の言葉です。このスローガンはJAL再生の計画実行の際にも活用されました。
わたしも、これから具体的な計画を立て、失敗を恐れず、ひたすらに「高齢者健康コミュニティ」を構築していくためにこのスローガンを肝に銘じていきたいと考えます。
窪田昌行