高齢者ケアのリーダーが学ぶ古今東西経営者のリーダーシップの本質とは?

 

世界のIT業界をけん引してきたアップルの元CEOスティーブ・ジョブズが105日逝去して3週間近くが経ちましたが、この間、新聞、雑誌を始め、IT業界の偉大なリーダーを失ったと様々な特集が行われています。iPodiPhoneiPadを企画、開発し、倒産寸前のアップルを再生させたジョブズのリーダーシップには偉大なものがあります。

古今東西、組織の大小を別にして、組織の盛衰を決める一人の人間が発揮してきたリーダーシップとはいったい何なんだろうか?というのは、私の最近の研究テーマです。しかも、私の専門分野である「高齢者ケア〜介護」の分野はなかなか優秀なリーダーが育たないというのが現状です。

そこで、私は、「医療福祉経営のためのリーダーシップ(1)」というテーマで、関係する医療福祉経営マーケティング研究会の第23回定例研究会 http://www.hc-market.net/archives/cat_16.php で欧米のリーダーシップ論と日本の卓越した経営者のリーダーシップについて研究したことをまとめ、発表しました。その要旨がまとまりましたので、以下に報告します。

特に研究していく過程で、日本の卓越したリーダー達が論語等の儒教に影響されていることを知り不思議に思い、私もいま、論語を読み直していますが、2500年前にこのような思想ができたことには、驚愕します。日本の経営者と儒教〜論語というテーマで、「医療福祉経営のためのリーダーシップ(2)」として、来年早々プレゼンしたいと考えています。なお、定例研究会で使用した内容スライドに興味のある方は、メール( kubotaHYPERLINK "mailto:kubota@hc-market.net"@hc-market.net )ください。お送りしたいと思います。

以下に、「医療福祉経営のためのリーダーシップ(1)」の概要を示します。

 

23 定例研究会報告(要旨)

 医療福祉経営のためのリーダーシップ論(1)

 

高齢者事業についてさまざまな法人、組織の新規事業の立ち上げを支援してきた中で、成功する組織、そうでない組織の違いを見てきたとき、リーダーが重要であることを感じている。経営の神様といわれる松下幸之助著の指導者の条件で、「組織のメンバーひとり一人が平凡であっても、その力やエネルギーを最大限に発揮させ、一定の方向に結集させる人に当を得れば、組織は発展していく。反対にメンバー一人ひとりの能力がいかにすぐれていても、良き指導者にめぐまれなければ、組織は混乱し、衰退していく。組織運営の成否はつまるところ、指導者によるところが大きい。」とある。

古典的なリーダーシップ研究では、主に特性アプローチ、行動アプローチ、変革型アプローチがある。特性アプローチでは、偉大なリーダーは偉大なリーダーになるべき特性を持っているという前提がある。このアプローチによって、適切なリーダーの選考を可能にしようという試みがなされた。行動アプローチでは、有効なリーダーとそうでないリーダーを区別する行動を区別化することによって、どのような行動が有効なリーダーを作り上げるのかを発見しようとした。行動アプローチ研究の実績では、例えばミシガン研究、オハイオ研究、三隅二不二のPM理論などが有名である。変革型アプローチは、スタッフに強い情動を起こさせることによって、「リーダーと同一である」という感情を起こさせるものである。命令するのではなく、教えることによって、スタッフの意思を変化させ、組織全体をよみがえらせ、変革することを目指すものであるが、ジョン・コッターの理論はまさに変革型である。コッターの研究による3つのリーダーシップの要素は、針路の決定する(ビジョンの形成)、社員の心を一つにする、社員を動機づけるから成り立っている。例えば、日産自動車のカルロスゴーンによる変革、復活がまさに、コッターの手順にそったものといえる。すなわち、ゴーンはまず、日産のビジョン「日産リバイバルプラン」を1999年に発表し、日産の職員の心を一つにするために、スピーチ、メール等を駆使して、社員一同に日産のビジョンを示し、現場で、職員を動機づけた。これは、変革型リーダーシップを発揮し、成果を上げた例である。

次の課題は、日本の優れたリーダー達はどのようにして経営哲学を培ってきたかをテーマとしたい。例えば、松下幸之助、東芝の石坂泰三、京セラの稲盛和夫、ソフトバンクの孫正義等について調査研究した結果、経営学を学び、現場でスタッフの動機付けを行ってきた医学に、論語等の古典からも影響を受けているということがわかった。この点についてはさらに研究を重ね、次回発表したいと考える。


国際的な視点の必要性〜日韓連携

 

 世界の人口は、1分間に137人、1日で20万人、1年で7千万人、増えています。一方、世界中で、1年に6千万人が亡くなり、13千万人が産まれます。 先日あるソフト会社の社長とお話ししていると、最近米国出張が増えたといわれていました。理由は?と尋ねると次のようなことを言われました。

 「ソフト開発費用が商品の価格を決め、マーケティング上の重要な要素である。今まで、日本だけを市場と考え、たとえば、開発費用が1000万円のとき、商品をいくつ販売するかで開発費用がコストになる。例えば1000台売れるとすれば、一台のコストは1万円、世界の人口は日本の100倍近くあり、10万台売れるとすれば、100円のコストになる。このようにコスト面からもこれからの技術開発を世界的始点で考える必要があり、世界を感じ、考えるために海外出張、米国出張が増えた。」との談でした。

 高齢者医療福祉の分野で働く、私たちの市場対象は国内の高齢者が中心ですが、新たなアイデア〜イノベーションを考えるには世界的な視点を考えることは有益であると考えます。

 話は変わりますが、平成23年1016日付けの西日本新聞朝刊の「提論、明日へ」の中で、一番身近な外国として、また日本のライバルである韓国との経済連携について、姜尚中(かんさんじゅん)氏の論説が興味深かったので紹介します。

 この中で、姜尚中はまず東日本大震災以後、日本企業の韓国進出が活発になりつつある4つの視点を述べています。

1.サムスンやLG、現代自動車など、韓国のグローバルな企業への安定的な部品や素材の供給を目指す日本企業が増えつつあること

2.すでに発効している欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)に加え、米国とのFTA批准を控えた韓国は東アジアのFTAのハブになりつつあり、円高にあえぐ日本企業にとって生産輸出拠点としての韓国の魅力がこれまで以上に大きくなっていること

3.ウォンがドルに比べても弱含みに推移し、法人税率が低く、電気代などのインフラ関係のコストや人件費も相対的に割安な韓国は魅力的な進出先となっていること

4.インフラが整備され、高い技術水準や労働力を備えた韓国はその地理的な利便性も加わって、震災や電力不足を避けたい日本企業にとってリスクヘッジのパートナーになりつつこと

 今後、日韓FTAが締結されれば、九州の米作や野菜、果物、牧畜や畜産などの農業や養殖を含めた漁業など、第一次産業に与える影響、また韓国側が建設企業の日本進出をオープンにすることを求めており、日本の建設・土木関連企業にも一定の影響が出てくる等課題があるとしたうえで、日韓の経済連携が九州経済の中長期的な展望から見た場合の次の3つの活性化の視点を提言しています。

1.FTAのハブとなる韓国との地政学的な近さは、九州が韓国市場への企業進出の拠点になることを意味しており、海峡を隔て5千万近くの進行市場に隣接する九州の戦略的な意義はますます大きくならざるをえないという視点

2.海峡を内海とするような韓国と九州の経済的な一体化が進み、中国や東南アジアへの共同進出の可能性が開かれるとともに、九州が名実ともに東アジアのゲートウエーとして重要な役割を果たすことになるという視点

3.ウォン安が是正され、対円レートでもその格差が縮まってくれば、韓国からの観光やビジネス、就業など、人的交流ももっと拡大し、観光資源の豊富な九州にとって計り知れないメリットがあるはずであるという視点

 以上のような点を考慮すると、九州経済、日本経済の未来にとって、九州の地政学的な優位性はますます大きくなりつつあります、と締めくくっています。

 世界の視点を考える中で、まず身近な韓国を考えることは有効であり、この論説は日韓関係を整理するうえで、興味深いものでありました。韓国の高齢化率は2010年現在11%で、日本のおよそ半分の高齢化率ですが、2018年には、14%を超え、国連が定義した高齢社会へ急速にシフトしていきます。その後2030年には20%を超え、2040年には約30%になりま。(日本は2040年:36.5%)。このような中、高齢化で先行する日本の高齢者ケアの理念、技術、システムが日韓で連携する可能性も大きく、日本の医療福祉関連法人にとって、日韓の経済、政治の連携の行方を観察していく意義は大きいものと考えます。


リーダーシップと死生観〜スティーブ・ジョブズと道元

 

この2011826日、現在一世を風靡しているスマートフォンの生みの親、スティーブ・ジョブズがアップルCEOの引退を宣言しました。この時、初めてジョブスが20051029日に行ったスタンフォード大学での伝説のスピーチを知りました。

ジョブズは、この時、3つのストーリーを話しましたが、私には、最後のスピーチが衝撃的でした。以下のとおりです。

私は17歳の時、こんな感じの言葉を本で読みました。「毎日を人生最後の日だと思って生きてみなさい。そうすればいつかあなたが正しいとわかるはずです。」これには強烈な印象を受けました。それから33年間毎朝私は鏡に映る自分に問いかけてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら今日やる予定のことは私は本当にやりたいことだろうか?」それに対する答えが「ノー」の日が何日も続くと私は「何かを変える必要がある」と自覚するわけです。

自分がもうすぐ死ぬ状況を想像することは最も大切な方法です。私は人生で大きな決断をするときに随分と助けられてきました。なぜなら、他人からの期待、自分のプライド、失敗への恐れなど、ほとんど全てのものは…死に直面すれば吹き飛んでしまう程度のもので、そこに残るものだけが本当に大切なことなのです。自分もいつかは死ぬと思っていれば、何か失うのではかないかと危惧する必要はなくなるので、私の知る限りの最善策です。失うものは何もない。思うままに生きてはいけない理由はないのです。

この話を聞いて思い出したのが、道元の弟子の師に対する「人間はなぜ成功する人としない人がいるのですか」との質問からの問答でした。

道元―成功する人は努力するからだ。

弟子―努力する人としない人がいるのはなぜですか。

道元―努力する人は志があるからだ。

弟子―なぜ志がある人とない人が生じるのですか。

道元―志のある人は、人間は必ず死ぬということを知っているからだ。志のない人は人間が必ず死ぬということを本当の意味で知らない。その差だ。
(出所:藤尾秀昭、「小さな人生論3」、致知出版社)

 国、企業、自治体等すべての組織にリーダーが求められています。

ジョブズはITの偉大なリーダーであり、道元は当時の仏教の偉大なリーダーでした。時代、分野は異なるわけですが、この二人が同じことをいっています。

この視点からいえば、リーダーを育てる重要な考え方は「死生観」を教育することかもしれません。多くの日本の卓越した経営者が古典を読むことを推奨しています。事業を率いていくリーダーはきちんとした死生観を確立するために、多くの古典に触れる必要があるのではないかと考えます。

窪田昌行


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