中国・上海CCRC計画(2)

  中国政府によると、中国の2011年の60歳以上の高齢者は、1億8500万人と日本の総人口をはるかに超えている。これが、2050年には、中国の総人口の33.9%に当たる4億3900万人に達すると予測されている。一方、一人っ子政策の影響で現役世代の人口は頭打ちで、高齢者に支払う年金が資金不足とのことで、来年には不足額が18兆3千億元(約227兆円)、2033年には、68兆2千億元(約845兆円)に膨らむとの予測で、中国でも深刻な経済問題となっている。中国当局は「高齢者施設の不足も指摘され、高齢化の程度が予想を超え、準備が遅れている」と認め、対策を急ぐことを強調している。
 そんななか、私の知人で、米国の不動産ファンドの中国責任者である、マーク・エリクソンが昨年から、中国でCCRCを開発中という報をもらい、この4月に上海に行き、マークの戦略を聞いてきた。
 その内容を含め、「中国における高齢者住宅とCCRC」について、医療福祉経営マーケティング研究会・定例研究会で発表したので、以下に報告する。
  

中国の2011年のGDP72981億ドルであり、日本を抜きアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となった。一方、中国の高齢化問題は深刻で、2004年には60歳以上の高齢者は1.4億人、2020年には倍増すると予想されている。中国における高齢化の特徴は、人口の多さによる絶対高齢者数の増加と、都市部で高齢化が進行しているといった高齢化率の地域格差、そして経済レベルの低いなかでの高齢化の進展があげられる。 そして、今後、中国における介護専門家の圧倒的な不足、介護サービスの欠如、認知症高齢者や重度の要介護者に対するケア施設の不足という大変深刻な状況が顕在化してくることが予想される。さらに中国には介護サービスが確立していない状況から、要介護や認知症高齢者への適切なケアができるのか、大きな課題である。

 親を養老院に入れる後ろめたさはかつて日本の文化にも存在していたが、中国はまだその傾向が強く、介護知識のない家族が要介護高齢者を家庭内に抱え込むことになっている。高齢者の施設としては公的な養老院があるが、ほとんどが三無(労働能力がなく、収入源がなく、扶養する家族がない)の人たちのための慈善事業的な意味合いが強い。必然的に高齢者介護施設、介護サービスへの要望は高まっているのだが、そもそも中国には介護という概念がないために、介護士や福祉士の教育や制度が手つかずのままになっているのが現状である。 一方、中国での経済成長に伴い、富裕層の高齢者が急増する見通しで、医療・介護関連のノウハウを蓄積した日本企業が巨大な中国市場を狙う動きが広がってきている。   

そのような折、私の知人で米国のCCRC開発事業者であったマーク・エリクソン氏が、中国でCCRCを開発しているということを知り、この6月に上海を訪問し、CCRC開発の近況を聞いたので本研究会で報告した。CCRCとは、「Continuing Care Retirement Community」の略である。老後、まだ健康な間に入居し、人生最期の時までを過ごす高齢者のための生活共同体のことだ。そこでは老化の進行に伴って必要となるヘルスケアサービスを、受け続けることができる。2010年の時点で、CCRCは全米に1861ある。マークは米国ファンドの中国責任者として昨年9月に中国に赴任し、当初は上海、北京で500室の米国CCRCをモデルにした高齢者住宅(IL: Independent Living NH: Nursing Home )を計画したが、想像以上に上海の不動産バブル崩壊の影響は大きく、この計画の推進は大きなリスクがあると考えた。  そこで、マークらがとった戦略は、完成直後の商業ビルを20年リースで賃貸し、リフォームしてIL,NHを作ることであった。このことにより、開発費用を新規の場合の3分の1にできる。計画の建物は13階建、(1Fは受付、2F食堂、3,4F:NH,513F:IL)の延べ床面積は18000屬任△襦IL150室、NH45室計画している。なお、NHはすべて二人部屋である。入居費用は、ILが、2種類で$1000、$2000を計画しているが、この時点では居室面積の広さは決まっていなかった。 NHの入居費用は$1400、$3000 2種類を計画していた。これから、フロア計画をつくり、リフォームを行い、今年、1112月に完成、運営する予定とのことであった。完成時には、再度上海に行くことを約束し、帰国した。 


日本版CCRCと中国・上海CCRC計画(1)

 

 1月にこのブログ書いて以来、久しぶりにCCRCに関するブログを書きます。

 

 この間、私が施設長を委任され運営に携わってきた太宰府市の通所リハビリテーションが新しい土地で大規模なデイサービスを行う計画が進み、新しい施設長候補も迎え、私の4年間近く続いた役割も終え、この4月からは顧問として企画運営面を中心にバックアップしていくことになりました。一方、古賀市で計画中であった住宅型有料老人ホームがこの6月から運営開始するにあたり、施設長をしていくことになった経緯等がありまして、このブログが休止していましたというのが、しばし筆をおいた言い訳になります。

なお、古賀市の新しい住宅型有料老人ホームについては、別な稿で書かせていただきたいと思います。

 

 このような直面の仕事と私の使命と考える日本版CCRCの普及については、年頭のブログで『CCRCが、「不安定な社会保障の選択肢として」、また「高齢者の幸せな生活を実現する一つの方策」として始動していくために、これから数回に分けて、まず米国の実情と課題をこのブログで説明していきたいと書き、この思いは強くなっていく中、私が1992年に米国CCRCで出会った、ジョン・エリクソンから、彼の最近の仕事として、中国、インドでの高齢者住宅CCRCの開発にも関係しているということ、そして彼の長男マークが米国の不動産ファンド(世界での運用資産は約5兆円とのこと)の中国代表として、いわば中国版CCRCに取り組んでいるとの連絡を受け、一度中国、上海を訪問し、情報・意見交換をしたいと考えていました。

私の仕事の場所、内容が変わる中、事務所も交通の便のよい博多駅前に411日に移しました。そして有料老人ホームの運営が始まる前にマークに会いたいと思い、418日、19日に中国・上海を訪問し、情報・意見交換を行ってきました。マークとは、2007年に米国メリーランド州ボルチモアであった以来でした。

一方、中国・上海は私にとっておよそ10年ぶりでした。幸いにも福岡空港から上海に毎日2便の直行便(中国東方航空)が飛び、私は朝950発で上海に飛びました。日本と上海は時差が1時間あり、飛行機は1025、ほぼ定刻に上海浦東国際空港に到着しました。空港からは10年前は存在していなかった“リニアモーターカー”に乗り、終点の龍陽路(ロンヤンスー)に向かいました。最高時速は430kmだそうですが、その日は時速300kmで、8分弱で龍陽路に着きました。(料金は片道50元で113円とすれば650円になります)

龍陽路からはタクシーで江蘇路(ジアンスールー)にある宿泊予定の上海日航ホテルに向かいました。(約50分要し、料金65元でした)

 マークはすでにホテルのロビーにいて私の到着を待ってくれていました。私はマークとの再会に感謝し、強く握手しました。マークは思っていたより、背が高く、たくましく、父ジョンに面影が似てきたと感じました。それから、中国、日本のCCRCについて意見交換しました。なお、このブログも長くなりましたので、その内容については、次の「日本版CCRCと中国・上海CCRC計画(2)」で紹介したいと思います。

窪田昌行


日本版CCRC・高齢者健康コミュニティとバリューチェーン経営戦略

 新しい年、2010年が明けて1ヶ月が過ぎましたが、先進国の世界的な景気後退はさらに厳しさを増し、日本においては、失業率の増加、今春卒業予定の学生の就職内定の悪化がとりあげられています。すなわち、日本経済、日本の企業再生の道筋が求められています。
 以前、日本企業は卓越した国際競争力を誇っていましたが、1990年代以降、経営において、日本の競争優位であった日本型競争モデルは限界に直面しています。このような中、「日本企業が再び、競争力を取り戻すには、品質とコストだけではなく、独自の戦略とイノベーション(新しい結合、組み合わせによる新しい価値の創造)による競争に移行することが必要である」といわれています。
 現在のグローバルで、歴史的な経済不況の中で、組織がいかに対応していくか、経営戦略がさらに重要になってきました。
 近年、組織、企業経営においても経営戦略という考え方が重要になってきており、戦略をさらに広くとらえて、わかりやすい言葉で示すと、「長期的な視点で、組織活動全体の進むべき道を明確にしたうえで、何をするかを考えること」といえます。すなわち、目標(ゴール)と現実のギャップを埋めるための組み立て(方法)です。
 企業における「戦略」という概念を初めて導入した競争戦略論の第一人者である、マイケル・ポーター(米ハーバード大学教授)は、医療分野にも詳しく、直近の昨年6月「医療戦略の本質〜価値を向上させる競争〜」を発表し、日米の医療関係者の間で話題となっています。興味のある方はご一読ください。
 さて、そのポーター教授と一橋大学が共同で、独自性のある優れた競争戦略を実践し、高い収益性を達成、維持している企業に贈られる「2009年度ポーター賞」が発表されました。審査のポイントは次のようなことです。
*優れた収益性の維持
*他社と異なる独自性ある価値提供
*戦略の一貫性
*戦略を支えるイノベーション(新結合)
*資本の効率的利用(特に投資資本利益率と売上高営業利益率)
*独自のバリューチェーン(価値連鎖)
*トレードオフ(何をしないかの選択)
*さまざまな活動間の調和
などだそうです。
 ポーター賞は今回で9回目を迎え、「複数事業を営む企業の事業部の部」では、ファーストリテイリング社のユニクロ事業と、パーク・コーポレーション社の青山フラワーマーケット事業が受賞しました。「単一事業を営む企業の部」ではポイントとプロパティデータバンクの2社が選ばれました。それぞれ、独自の戦略で他者との競争における優位性を築き上げての受賞だと思います。
 いま私どもは、高齢者住宅と介護保険事業の通所事業、訪問事業に在宅医療サービスを組み合わせたシステムを研究し、地域社会、エンドユーザーである高齢者がWIN−WINの関係にできるモデル〜日本版CCRC・高齢者健康コミュニティの開発に取り組んでいます。
 その新しい日本版CCRCモデル構築には、マイケル・ポーター教授のいう独自のバリューチェーンを創り上げていく戦略が重要です。具体的には、医療、生活支援、介護、マーケティング、サービスを主活動とし、購買、情報技術、人事教育、全般のインフラという支援活動を組み合わせたバリューチェーンを検討しています。この高齢者住宅の新しいバリューチェーンモデルについては、現在、医療機関等と研究中であり、別の機会に発表していきたいと考えています。
窪田昌行
(参考資料:日本経済新聞、2010年1月16日 2009年度ポーター賞について)

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